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互助会に参加するニート達 後編 彼らに必要なモノは、万人に必要なモノだ

今日の参加者は男性7人女性1人の8人だ。

金髪に髪を染めている男性もいれば、わりと美形の女性(ニートではとても珍しい!)もいる。遠くから電車を乗り継いで来ている人もいるらしい。社会復帰を目指す強い意思が感じられる。

一人ずつ自己紹介が終わると、テーマが提示され、一人ずつそれについてスピーチを行う。スピーチを行うことがこの会の主な活動だ。テーマを出す、それについて自分の意見を言う、といったやり取りをえんえんと繰り返していく。

「一番悪い時と比べて今は何割くらいですか?」というテーマが提示される。

ある人は5割、ある人は2割と答える。スピーチをパスする青年もいた。苦しければ、スピーチをパスしてもいい。緊張する必要は無い。

次のテーマは「最近お勧めの映画」である。

みんな思い思いの映画を上げていく。20代の女の子は「『君の名は』はお勧めです」と語った。ニートと言っても世間とまったく関係を絶っているわけではない。流行の映画を愉しむ普通の女の子であることが垣間見える。

次のテーマは「平日どうして過ごしているか」だ。

これは実は私が出したテーマである。この会ではテーマの考案も参加者が行うのだ。

皆なんというのだろう。と期待したのだが、ほとんどのメンバーがパスしてしまった。「家にいます・・・。」と答えた人もいたが具体的に語ってはくれなかった。参加者は全員ニートであることはお互いに知っている。毎日家にいて、(話すほどのことは)何もしていないことも知っている。がそれでも、プライバシーに関する事を発言するのは憚られることなのだ。私はニートのライフスタイルを知ろうとしてこのテーマを出したのだが、欲張りすぎて彼らの心の琴線に触れてしまったようであった。

この会の2時間はあっというまに過ぎてしまった。次々とまわってくるテーマ(課題)をグループでこなしていくうちに、学校の同級生とグループになって課題をこなしていた中高生の頃の想い出を追体験しているような気分になっていたのだ。私はこの会を楽しみ、充実していたのである。

ここであることに気がついた。

人は、誰しもが最後は無職になる。

遅い、早いという時期の差はあれど、仕事を引退する日はいつかやってくる。

全員がニートになるのだ。

人は社会的な動物であり、人との繋がりを持つことは人間の精神を保つためには必要不可欠なことだ。しかし、友人もまた高齢化してくれば、徐々に死んでゆき、孤独になっていく。本質的に必要なのは、新しい友人をつくるためのコミュニティなのだ。

似た境遇の者を集め、発言し、傾聴し合う。

この会は、ニートだけではない、万人に必要となるものである。

たとえ現役の有職者であろうと、必要なものではないだろうか。

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